公的年金とは、社会保障の観点から国が行う公の年金制度のことをいいます。公的年金の全体像として「被保険者」と「保険料納付」をまとめた後、公的年金の納付として「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」「付加年金」「障害基礎年金」「障害厚生年金」「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」について解説しています。
公的年金制度の全体像
公的年金の全体像として「被保険者対象者」と「保険料」について解説していきます。
公的年金の被保険者
公的年金には「国民年金」「厚生年金」「共済年金」があります。公的年金の被保険者とは、健康保険に加入して状況に応じた給付を受けることができる人をいいます。※共済年金は、2015年に厚生年金に一本化されました。
- 国民年金とは20歳以上の全国民が加入する公な保険のことです。
- 厚生年金とは民間の会社員・公務員が加入する公な保険のことです。厚生年金は強制加入になります。
- 共済年金とは国家公務員が加入していた保険のことです。(現在は廃止されています。)
公的年金の対象者イメージ図
そして、それぞれの加入区分によって「第一号被保険者」「第二号被保険者」「第三号被保険者」と名称がついてます。
保険料納付
第一号被保険者
第一号被保険者の対象者は、国民年金に加入しなければなりません。
国民年金保険料:16,410円/月
第二号被保険者
第二号被保険者の対象者は国民年金と同時に、厚生年金に加入しなければなりません。
厚生年金保険料(毎月):標準報酬月額×保険料率(18.30%)=
厚生年金保険料(賞与):標準賞与月額×保険料率(18.30%)=
・保険料は事業主と従業員が半分ずつ負担(労使折半)
・産休中と育児休暇中の保険料は、一定期間事業主と被保険者ともに免除
標準報酬月額:基本給+役付手当+通勤手当+残業手当―賞与=から算出した数字をもとに、報酬月額を1等級(8万8千円)から31等級(62万円)までの31等級に分け、その等級に該当する金額を標準報酬月額といいます。等級は年度、都道府県ごとに違います。
最新の等級はこちら↓
引用:全国健康保険協会「平成31年度保険料額表(平成31年4月分から)」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3150/h31/h31ryougakuhyou4gatukara
第三号被保険者
保険料の負担はありません。
保険料納付の免除
一定の要件を満たすことで、保険料納付は免除されます。なお、保険料の免除を受けた期間については、10年以内ならば追納できます。
【法定免除】
届出があれば、保険料の全額が免除されます。
【申請免除】
申請後、承認された場合、保険料の全額または一部が免除されます。(全額免除、3/4免除、半額免除、1/4免除の4段階)
【学生給付特例制度】
申請によって、保険料の納付が猶予されます。
【納付猶予制度】
申請によって、保険料の納付が猶予されます。
公的年金の給付
国民年金や厚生年金を一定期間納付することで、公的年金の給付を受けることができます。
老齢年金
老齢年金とは、ある一定の年齢になると支給される年金のことです。公的年金において「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」にわかれます。
老齢基礎年金
国民年金を納付し要件を満たした人が、老齢基礎年金を受け取ることができます。
【老齢基礎年金の受給要件】
老齢基礎年金は、国民年金を10年以上支払った人が65歳になったときに受け取ることができます。
老齢基礎年金の年間額は、満額で2019年12月現在780,100円となります。
【老齢基礎年金の受給時期】
老齢基礎年金は、受給期間を繰り上げることや繰り下げて受給することができます。なお、繰り下げの申し出は66歳以降に行う必要があります。
・繰上げ受給⇒繰り上げた月数×0.5%=年金額から減算
・繰下げ受給⇒繰り下げた月数×0.7%=年金額に加算
【付加年金】
付加年金は、第一号被保険者のみの制度になります。付加年金とは、任意で月額400円を国民年金に上乗せして納付することによって、「200円×付加年金保険料の納付期間(月数)」が老齢基礎年金に加算される制度です。
老齢厚生年金
厚生年金を納付し要件を満たした人が、老齢厚生年金を受け取ることができます。
【老齢厚生年金の受給要件】
老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格期間を満たし厚生年金を1ヶ月以上支払った人が65歳になったとき受け取ることができます。
具体的な計算式はこちらをご覧ください↓
引用:日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20150401-03.html
【特別支給の老齢厚生年金】
平成12年度に受給開始が60歳から65歳に引き上げられたと同時に、救済処置として「特別支給の老齢厚生年金」制度が新しく設けられました。特別支給の老齢厚生年金の要件は以下になります。
・男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと。
・女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと。
・老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること。
・厚生年金保険等に1年以上加入していたこと。
・60歳以上であること。
特別支給の老齢厚生年金の受給金額は以下で、確認ください。↓
引用:日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金について」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20140421-02.html
振替加算
振替加算を使うと、加給年金が打ち切られる代わりに配偶者の生年月日に応じた金額が配偶者の老齢基礎年金に加算されます。
障害給付
障害給付とは、被保険者が所定の障害状態になった際に支給される公的年金のことです。
障害基礎年金
障害厚生年金
遺族給付
遺族給付とは、被保険者が死亡したときに、残された遺族に対して支給される公的年金のことです。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者が死亡した場合、被保険者に生計を維持されていた「18歳到達年度の3月31日までの子」または「18歳到達年度の3月31日までの子が居る配偶者」に支給される公的年金のことです。
子の加算額は第一子と第二子は同額(第三子以降は少なくなります)
第一号被保険者に対する独自給付(寡婦年金と死亡一時金)
【寡婦年金】
寡婦年金とは、第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が10年以上ある夫が亡くなった場合、60歳から65歳になるまでの間支給される年金です。要件として、婚姻関係が10年以上継続している必要があります。
【死亡一時金】
死亡一時金とは、第一号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった場合、その被保険者によって生計を同じくしていた遺族に支給されます。
・死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円
・付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算
・遺族が、遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されない
なお、寡婦年金を受け取る場合には死亡一時金を受け取ることができません。(いずれか一方)
遺族厚生年金
遺族基礎年金は、厚生年金の被保険者が死亡した場合、被保険者に生計を維持されていた「妻・夫・子・父母・孫・祖父母」に支給される公的年金のことです。
ただし、「夫・父母・祖父母」が受給者となる場合、55歳以上であることが要件となります。また、年金受給は60歳以上からになります。
「子・孫」は18歳到達年度までになります。(または20歳未満で障害等級1,2級)
寡婦加算
被保険者の妻が、いくつかの要件を満たすことで「中高齢寡婦加算」「経過的寡婦加算」を遺族厚生年金に加算して受給することができます。
【中高齢寡婦加算】
被保険者である夫の死亡時、40歳以上65歳未満の子のない妻、または子があっても40歳以上65歳未満で遺族基礎年金を失権している妻には65歳まで加算されます。
【経過的寡婦加算】
昭和31年4月1日以前生まれの妻に限り、加算されます。
給付調整
いくつか同時に給付できるものとできないものがあります。
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